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2024.02.19

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副産物は「かつら」

 新大陸を発見したコロンブスが、アメリカから帰国した1943年、梅毒はまずスペインで流行しました。そしてわずか数年の間で、この病気はヨーロッパ全土に広まりました。免疫性がない土地に侵入した伝染病は、猛威をふるいます。感染の拡大は、ほとんどが粘膜の直接の接触によるものでした。

 梅毒の症状変化は4つの時期に分けられていますが、このうちの第2期(感染後3か月〜3年)には、梅毒性脱毛症が生じます。このため、16世紀頃から、ヨーロッパでは頭髪の抜け落ちを隠すため、男性の装飾の一部として「かつら」が用いられるようになりました。これが発端となり、昔の音楽家たちに見られるような、ボリュームのある独特な「かつら」に変わっていったのでした。私たちが目にする、当時の肖像画に見られる髪型は、梅毒がなければ生まれなかったわけです。17世紀になると梅毒の症状は軽くなり、徐々に毒力が弱くなっていきました。これに伴って、「かつら」の流行も消えていくことになりました。

 当初、原因不明であった梅毒。その病原体はスピロヘータ・パリーダと言いますが、この原虫が発見されたのはヨーロッパでの流行後、なんと450年も経ってからのことでした。

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