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2024.06.10

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神経の話

 医学用語として使われている漢字の多くは、中国から伝わってきたものです。しかし稀に、日本で独自に作られた言葉があります。その1つが「神経」です。

 西洋医学が伝来してくるまで、中国や日本では末梢神経の存在は理解されていませんでした。1750年、杉田玄白らがオランダの医学書を翻訳して「解体新書」を作る時に、神経という語を創造し、初めて世に出た言葉になりました。英語で神経はナーブnerveで、神経質なことはナーバスnervousと言い、これは日本に定着した言葉になっています。神経には運動神経と感覚神経がありますが、その機能は脳からの指令を末梢へ伝えること、手足の末梢の情報を脳へ伝えることです。

 玄白が友人の医師にあてた手紙が残っていて、そこには神気の「神」と経脈の「経」を用いて作った言葉であることが記されています。彼もこの用語を作り出すために、かなり「神経」をすり減らしたことでしょう。まさしく、絶妙な言葉となりました。

 玄白は晩年の1799年、やはり友人への手紙の中で述べています。「西洋の医学は東洋とは違うものの、薬の使い方などには似たところがあって、人情というのは天下通情のようである」。

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