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2021.03.30

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くちばし状の突起

 肩甲骨は背中側にある骨ですので、肩の前方からは触れられないと思われがちですが、実は腋の少し上の部分を強く押すと、わずかに骨の感触があるところがあります。これは肩甲骨の一部で、烏口突起(うこうとっき)と呼ばれる、骨が隆起した所になります。

 突出した骨の形状が、あたかもカラスのくちばしのように弯曲していることから、「烏の口」という意味でこの名前が付けられました。

 江戸時代に杉田玄白らが、解体新書に「烏喙(うかい)突起」という名で掲載し、その後はこの呼び名が用いられていたのですが、石川啄木の名前が有名になるにつれ、多くの医学生がこれを「烏啄(うたく)突起」と間違って呼ぶようになってしまいました。あまりにもこの呼び名が教育現場で浸透してしまったため、なんと一時は解剖学会でも、名称を「烏啄突起」に変更したほどでした。しかし戦後になり、漢字を簡略化したことが功を奏し、本来の意味に従って烏口突起に戻ったのでした。

 肩関節脱臼の際には、上腕骨の頭が烏口突起の下に移動します。ですからこの突起が一番触りやすくなるのは、実は肩がはずれた時になります。

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