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2023.03.16

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ピロリ菌

 今では、胃潰瘍に対しピロリ菌を除菌するという治療は一般的になっています。

 胃には酸性の胃液があることから、以前は細菌が存在しない場所と考えられていました。もし菌が侵入したとしても、酸の作用で死んでしまうからです。しかしオーストラリアの病理学者ウォーレンWarrenとマーシャルMarshallは、多くの胃潰瘍患者さんの胃に、らせん状の細菌(ピロリ菌)がいることに気付きました。そして1983年、苦労の末に菌の培養に成功し、これが胃潰瘍の原因になると主張しました。しかし胃の中では細菌が生育するはずがないという先入観から、彼らの説は認められませんでした。

 胃潰瘍はヒト以外の動物にはみられない疾患ですので、動物実験ができません。そこでマーシャルは、自らピロリ菌の培養液を飲み、自分の胃に障害が起こったことを確認することで、この説を証明したのでした。それまで胃潰瘍は、胃粘膜を保護する作用が、粘膜を攻撃してくる因子(ストレス、喫煙、暴食など)に負けることで発症すると考えられていましたが、ピロリ菌の出現により医学の常識が大きく変わったのでした。

 ウォーレンとマーシャルには、2005年にノーベル医学賞が授与されました。

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