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2022.09.28

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半分の障害

 背骨の中を通っている脊髄神経は、直径10数mm足らずの太さです。この中に驚異の情報量を含んでいて、手足の機能を司っています。このサイズですから、障害を受ける場合は一般的には全部が損傷されるか、ほんの一部が機能不全になるか、ということが多いのですが、非常に稀に左右どちらかの「半分」だけが障害されることがあります。

 この場合、損傷を受けた側では運動麻痺と知覚異常が生じ、反対側では痛みと温度を察知する感覚が失われるという、奇妙な症状が出現します。この病態は、動物実験を行なって確認した医師の名前をとって、ブラウン・セカール症候群(Brown-Sequard)と呼ばれています。

 ブラウン・セカール(1817-1894)は、パリの医学部を卒業後に脊髄の研究に没頭し、ついに左右の神経線維が交叉しているということを証明したのです。これは当時、画期的な発見でした。

 セカールと発音するため、多くの書物にフランス人であると書かれていますが、実は彼は61歳までは英国人でした。教授に就任した際に、帰化をしてフランス人になったのです。彼の名前は、ブラウンという英国人の父親、セカールというフランス人の母親の名前を合わせて付けられたもので、日本語で言うと「太郎-花子」といったニュアンスになります。名前も「半分」ずつもらったのです。

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