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2022.05.31

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デュピュイトラン男爵

 フランスのデュピュイトラン男爵(1777-1835)は、近代外科学の発展に大きく寄与した人です。多くの解剖学知識を基礎として、見事な手術テクニックを持っていたことから、彼の名前はヨーロッパ中に広がりました。

 彼には多くの業績がありますが、整形外科では足関節の骨折と手の拘縮(こうしゅく)の病名に名前が残っていて、特に手の「デュピュイトラン拘縮」は有名です。これは壮年期以降に薬指や小指が伸ばせなくなるような運動制限が生じる疾患で、手のひらには硬い索状物ができます。現在では、特殊な注射や手術での治療が行われます。

 実はこの病気を最初に報告したのは、デュピュイトランではありません。彼が発表した時には、すでに多くの医師がこの病気の研究を行なっていました。なぜ彼の名前が使われているのでしょうか。

 残された記録を見ると、彼は自尊心が強くかなり激しやすい性格だったようです。フランスの軍医は、「デュピュイトランは最高の外科医だが、ほとんどの医師からは嫌われていた」と述べています。良くも悪くも、とても印象的だった人物だったわけです。

 病名に名前を残すにしては、かなり珍しい理由になっています。

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