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2021.05.07

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メデューサの頭

 ギリシャ神話に関連した医学用語はたくさんありますが、人名がそのまま登場するのは「アキレス腱」と「メデューサの頭」の2つだけです。

 メデューサはギリシャ神話に出てくる怪物の名前で、3人姉妹の末娘になります。元々美しい少女だったのですが、アテーナーの女神と美しさを競ったことから神の怒りを招き、醜い顔に変えられてしまいました。そして自慢の頭髪は、多数の蛇にされてしまったのです。メデューサは、自分の姿を見た人間を石にしてしまうという魔力を持っていたので、彼女を倒すことは困難でした。しかしある戦士は、メデューサの顔を直接見ないように、青銅の盾に彼女の姿を映しながら戦い、この怪物を絶命させたのでした。

 腹部臓器の血液は、門脈という血管から肝臓を経て心臓に戻るのですが、肝硬変になると、この流れが障害されます。すると血液は、お腹の壁の静脈を使って心臓に戻ろうとします。このため、ヘソの周囲の皮静脈が蛇行して怒張するようになります。これが蛇を乗せた頭髪に似ていることから、この現象を「メデューサの頭」と呼ぶようになりました。

 しかしいくら神の怒りを買ったとは言え、髪の毛が蛇というのは少々可哀相な気がします。

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