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2025.05.06

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クロロホルム

 TVドラマで、相手の顔にハンカチを当てて眠らせるというシーンがあります。使われる薬はクロロホルムです。これは吸入麻酔薬ですので、呼吸の際にそのガスを吸ってしまうと眠ってしまうわけです。

 スコットランドの産婦人科医シンプソンJames Simpson(1811-1870)は、なんと14歳という若さでエジンバラ大学に入学し、18歳で医師開業試験に合格しました。卒業後は、すぐに産婦人科の教授になっています。

 彼は、当時使用されていた麻酔薬エーテルが喉に強い刺激を与えることから、これを嫌い他の麻酔薬を探していました。1847年、2人の科学者の友人とクロロホルムで実験したところ、全員が卒倒してしまい、翌日まで意識が回復しませんでした。これに満足したシンプソンは、すぐに産科で使用しました。しかし「出産時の陣痛は忍耐と根気で辛抱すべきもの」という当時の考えから、痛みを緩和することに対しての応用は反対されました。

 賛否の論争は続きましたが、1853年にビクトリア女王の第8王子出産の際に、シンプソンがクロロホルムを使ったことで決着がつきました。

 痛みを取り除くことは、現代の医学でも重要なテーマになっています。因みに、クロロホルムを染み込ませたハンカチを顔に当てられても、麻酔薬の作用の観点から、たった数秒で眠ってしまうことはまずあり得ません。

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